前回のあらすじ

さて、デジタル同人誌サイトで、とあるブツを購入したのであるが、それに払った対価よりもずっと価値のあることを学んだので、ここに記しておこう。

そもそも、売れていて人気がある、というか、売れる同人誌とはどういうものか、という厳然たる事実を突きつけられたわけである。しかし絶望しているわけではない。

けだし、人間の似姿をミーメーシスするのが漫画の機能である。しかるに今般購入したブツは、人間が描かれていないのだ。ただの肉塊っていうか、インクの染みっていうか、「こんなの人間じゃない!」と心ある読者なら叫び出しそうな、そんなブツなのである。

一方で、描かれているのが別に人間じゃなくっても、エロいものにはコーフンするのが人間の性だから、否むしろ人間性など持ち合わせない肉塊のほうがエロい、ということこそ真実であろう。何かで読んだが、愛し合う二人の性交よりも、行きずりの性交のほうがエロい、のである。つまり、脈絡も何もなく突然エロい行為が始まり、一切の倫理もへったくれもなく、人体の性感帯が刺戟されて感じちゃうというただそれだけの描写がなされれば、愚息も元気になり満足できる。

しかし吾輩は思い止まった。「こんなの人間じゃない!」という心からの叫びを発している。たといこういうものが何千という数、売れているとしても、吾輩はその後追いをしてはならない。人間は、女の子は、そこにいない。

こうして、図らずも、人間らしさの欠片もないような、しょうもない同人誌のほうが、エロくて人気があって売れている、という事実が明らかになったのであった。

ついでに言うと、「おもいでづくり」(スナメリ・著)という商業漫画があり、いささかネームが多くて理屈っぽい漫画が並んでいるのだが、絵柄は好みである。まあ、ここに描かれている「人間」も大概ではあるが、身も蓋もないエロ同人なんぞとは、とても比べることはできない。

ともあれ、わずかながら金銭を支払って、大きな教訓を得られたのだから良しとしよう。