前回のあらすじ

弟切草(SFC)というゲームは吾輩の人生の一部を形作っている。

このゲームは小説のようにセリフや描写を読み、同時に音楽を聴きながら進めるものである。

文章は極めて平明で、まあ男女の会話ということで口ぶりを変えることによって、男がしゃべったのか女がしゃべったのか一目瞭然となっている。

仮に効果音がないとしても、この文章は「サウンドノベル文体」とでも呼ぶべきものであって、そっくりそのまま活字にしてみたらちょっと描写不足なところがあり、厳密に小説と呼べないが、Aボタンを押すたびに少しずつ読み進めるというゲームならではの機能により、次は何が飛び出すのか、とドキドキしつつ(もう何千回もプレーしたからドキドキも何もないが)毎回プレーしている。

で、ヒロインの奈美にまつわる描写が、実際に奈美がそこにいるかのように実に的確で過不足無い記述によって実現されている。凡百のノヴェルなんかよりよっぽど面白いしこれから創作をしようとする者にとっては学習教材となるものである。

まあ、このゲームの脚本そのものを活字にしてみたら、それはそれでゲームとは別物となってしまい、魅力半減かもしれないな。吾輩は小説を書きたいとは思わんがサウンドノベルの脚本なら書きたいと思料するものである。